は じ め に
2011年8月の弘前大学教員免許状更新講習会に向け『ネットリスク教育インストラクター講習(教員)テキスト試案』を発刊した。講習会で使用する共に関係者に配布したところ好意的な感想が多々寄せられたため、少しでもこのテキストが関係者のお役に立つならば引き続き刊行しようと2012年度の教員免許状更新講習会目指して検討を重ね、2013年まで4版を重ね、3000冊近く利用された。
2014年3月に私が弘前大学を退職したことにより、教員免許状更新講習会に係わる機会がなくなり、また、弘大ネットパト隊も活動場所がなくなったこともあり、活動が停滞した。しかし、パト隊は2015年5月に新体制により再建し、数々の小事業を達成させ、ついにパト隊先輩が築いた、テキストの編集作業に挑戦する機会に恵まれた。折しも、2017年度に青森大学のご配慮により、社会学部の船木昭夫教授等と「いじめ・自殺予防教育の基礎と子どものネットリスク教育」という選択科目を担当することが実現したため、直接的にはその講習の資料として作成することができた。
今回の「再建版テキスト2017版」は、メンバーの人数と活動場所の制約から「コンテンツ」を中心に編集するものとした。この分野こそ、ケータイ世代の皆さんがもっとも得意とする分野で、逆に教員やネットアドバイザー等「子どもの支援者」がもっとも苦手とする分野である。
また、本テキスト編集に着手できたのは、闘病中の大谷に代わり、初代パト隊隊長で研究会副代表の本間先生が、直接関わって支援することができたからである。弘前市で開かれる編集会議に、青森市から通われた。パト隊の皆さんと本間先生に感謝。
本書の原稿は、前回と同じく全てケータイ世代のパト隊学生が執筆した。書籍としての体裁が整っていないところも多々あり、各分野の専門家からみたら問題と思われる記述もあると思われるが、今後皆様方の批判や意見を聞きながら改善していくものであるということで、不十分なところはお許し願いたい。
さて、ネットリスク教育という考え方は、事典上では明確にされていない。下田博次が「高校生位になればモラルを説くよりリスクを教えた方が被害を防げる」と述べ、その考えを踏襲して大谷が、ITリスク概念を敷衍し概念化を試みた(2010.4)。ネットリスク教育は、保護者を対象にすれば、欧米で普及している「ペアレンタルコントロール」の思想に繋がり、教員や子どもを対象にすれば、文部科学省「情報教育」における「情報に参画する態度」の一部を別視点から再構成するものと考えられる。
ところで、第1章の「ネット・ケータイ問題の三側面とケータイ文化」は、大谷が9年前(2009.4)に本問題を捉えるために図式化したものである。子どもの側から問題を把握する視点として提起した。「今本校では、私の学級では、三側面の何の問題が中心で、どんな被害が生じているか」を把握し、それぞれの側面に対応した対策を立てることを明確にするために有効である。そのためには、問題を把握するための、学校・学年・学級での調査が欠かせない。これは、ネットリスク教育の教育内容を確定するための第一作業となると考えられる。
2017年7月20日 大 谷 良 光
目 次 第1章 ネット・ケータイ問題の三側面 ――――――― 2 第2章 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)- 4 第3章 LINE ―――――――――― 7 第4章 Twitter ――――――――― 20 第5章 Facebook ――――――― 31 第6章 Instagram ――――――――35 第7章 インターネットに接続できる器機 ――――――48 第8章 スマホゲーム(ソシャゲ) ――――――― 54 |